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進化する旅行トレンドとスマートな収益戦略が日本のホテル市場を定義する

2025-10-28 11:36 Hospitality Japan Conference Hotel Revenue Summit Asia Hospitality Asia
東京――日本のホテル市場では、季節休暇や自然災害、そして訪日外国人旅行者の行動変化など、さまざまな要因によって観光パターンが大きく変化している。インバウンド需要の回復が進み、新たな地域が外国人旅行者の人気目的地として注目を集める中、こうした動きは、主要都市における平均客室単価(ADRs)や価格戦略、さらには市場ポジショニングのあり方に大きな影響を与えている。

観光トレンド

ホテル収益サミット(#HRSJ)では、CoStar Groupのビジネスデベロップメントマネージャーである櫻井詩織氏が、日本のホテル業界が安定的な「正常化の段階」に入ったと分析した。現在の業績は、国内外の旅行シーズンのリズムと密接に連動しており、インバウンド需要が稼働率を押し上げる一方で、春節(旧正月)やイースターなど主要な祝祭日を中心に、年間を通じて予約パターンや料金調整に明確な変化が生じているという。

櫻井氏はまた、地域別の需要も日本特有の気象変動や季節性に大きく影響を受けていると指摘した。台風の発生や長い夏季などの影響により、月ごとの宿泊傾向に差が見られるが、それでも京都や北海道といった人気観光地は依然として外国人旅行者から高い注目を集めている。特に大阪では、2025年4月から10月にかけて約2,800万人の来場が見込まれる「大阪・関西万博」の開催を控え、関西圏全体の観光活性化がさらに加速している。

さらに、訪日旅行者の多くが滞在日数を延ばす傾向にあり、より深い体験志向・スローな旅行スタイルへの移行が見られる一方で、国内旅行はやや落ち着きを見せており、特に外国人観光客が集中する大都市圏ではその傾向が顕著だという。櫻井氏は、こうした国内外需要のバランス変化こそ、ホテル事業者にとって2026年に向けた成長を維持するための**ダイナミックプライシングと機動的な収益戦略**の重要性を示していると強調した。

2026年の展望

日本の観光回復が成熟期を迎える中で、ホテルオーナーや運営事業者は、持続的な料金パフォーマンスとより賢明な収益管理に焦点を移しつつある。パネリストたちは、平均客室単価(ADR)が2024年以降着実に上昇してきたものの、2026年には成長のペースが安定化すると見込まれる点で一致した。

AXAリアルエステート・インベストメント・マネージャーズ日本統括の早藤義彦氏は、2025年の需要は前年比で約8〜10%の伸びを示したが、今後はより緩やかな拡大になると予測。「2026年は4〜6%程度の成長に落ち着くと見ています。ADRの継続的な上昇がなければ、収益目標の達成は難しくなるでしょう」と述べた。

議論では、建設コストの上昇、新規ホテル供給の増加、そしてオーナーの収益期待などの影響についても取り上げられた。開発コストの高騰や再開発案件の再始動により、料金上昇の勢いが抑制される可能性がある一方で、投資家は引き続き高いリターンを求めている。ソラーレ ホテルズ アンド リゾーツ株式会社 執行役員の吉田克之氏は、「爆発的なADRの伸びは持続可能ではありません。私たちは稼働率を犠牲にせずADRを高める、バランスの取れた運営を重視しています」と述べた。

また、テクノロジー導入も主要なテーマとして浮上した。パネリストたちは、日本のホテル業界が徐々にAIを活用した料金設定システムへ移行しつつあることを指摘した。自動化によって予測精度とデータ分析の正確性は向上するが、最終的な戦略判断には人間の洞察力が不可欠であるという。「AIは支援のためのツールであり、人間の直感を置き換えるものではありません」と吉田氏は述べ、価格設定や商品戦略における人間の判断力の重要性を強調した。

運営者と投資家の双方の視点から見ても、今後の鍵となるのは**適応力**である。データとテクノロジーを活用しつつ、市場動向を深く理解する姿勢が求められる。持続的な成長は、運営面での実行力だけでなく、オーナーや投資家が変化するゲストの期待に合わせて資産をいかに準備・最適化できるかにもかかっている。

今後の展望

日本のホスピタリティ業界が進化を続ける中、「第5回日本ホテル業界カンファレンス(#HJC2026)」は、2026年10月7日・8日に東京で再び開催される。業界のリーダー、投資家、そしてイノベーターが一堂に会し、日本におけるホテル、観光、開発分野の未来を見据えた対話の場として引き続き重要な役割を果たすことになる。

次回の開催では、投資のレジリエンス(強靱性)、柔軟なデザイン、そして日本の観光回復の次なる段階を中心テーマとして、議論をさらに深める予定である。地域活性化、人材の持続可能性、異業種連携にも新たに焦点を当て、日本ならではの地域性を保ちながら、業界全体の競争力をどのように高めていくかを探求していく。

ホテル投資サミット、ホテルデザインサミット、ホテル収益サミットを通じて、ホスピタリティ・アジアは今後も「創造性」「文化的真正性」「商業的成果」が交差する日本のホスピタリティの未来を形づくる対話をリードしていく。

#HJC2026の詳細については、今後の続報をぜひご期待ください。

詳細は以下のウェブサイトをご覧ください:
https://hospitality-japan.com/ /https://www.hospitalityjapanconference.com/

お問い合わせ先:delegate@hospitality-asia.com